老犬ホームを開くには?
動物取扱業の登録と、始める前に決めること

年をとった犬を、飼い主さんに代わって最期まで見守る。老犬ホームを開くには、第一種動物取扱業の登録が必要です(動物愛護管理法第10条)。

ただ、法律に「老犬ホーム」という名前の区分があるわけではありません。飼い主さんとどんな約束で犬をお世話するかによって、登録する業種が変わります。ここを最初に決めておかないと、登録の書類も、開業後の手続きも組み立てられません。

まず決めること:「譲受飼養」か「保管」か

老犬ホームで関係するのは、主に次の2つの業種です。

項目 譲受飼養 保管
犬の持ち主 ホームに移る 飼い主さんのまま
お世話の形 犬を譲り受けて、ホームが飼う 犬を預かって、お世話をする
費用 譲り渡した飼い主さんが、飼養にかかる費用の全部または一部を負担 お預かりの料金をいただく
根拠 動物愛護管理法施行令第1条第2号 動物愛護管理法第10条第1項

譲受飼養は、政令で「動物を譲り受けてその飼養を行うこと(当該動物を譲り渡した者が当該飼養に要する費用の全部又は一部を負担する場合に限る。)」と定められています。飼い主さんが手放して、お世話の費用を払う形です。

一方、飼い主さんが持ち主のまま、長い期間お世話を任せる形なら「保管」です。

両方を行う場合(たとえば、終生のお世話は譲受飼養、短期のお預かりは保管)は、登録は業種ごとですので、両方の登録が必要です。どちらに当たるかは契約の中身で判断されますので、申込書・契約書をつくる段階で決めておくことをおすすめします。

登録の申請で必要になるもの

登録は、事業所の所在地を管轄する都道府県知事(指定都市は市長)に申請します(法第10条第1項)。宝塚市なら、兵庫県動物愛護センターが窓口です。

① 動物取扱責任者

事業所ごとに、動物取扱責任者を選任します(法第22条第1項)。獣医師・愛玩動物看護師のほかは、半年以上の実務経験(常勤)または実務経験と同等と認められる1年以上の飼養経験に加えて、1年以上教育する学校等の卒業または所定の団体の試験の合格が必要です(動物愛護管理法施行規則第9条)。

どの業種での実務経験が認められるかは、施行規則の別表で決まっています。飼養施設のある保管と譲受飼養では、販売(飼養施設あり)・保管(飼養施設あり)・貸出し・訓練(飼養施設あり)・展示・譲受飼養のいずれかの実務経験が認められます。たとえば、ペットショップやペットホテル、犬や猫とふれあえるカフェ(展示)での勤務経験も対象になりうるということです。実際に認められるかは勤務の実態と証明書類で判断されますので、先に窓口で確認しておくと安心です。

② 飼養施設の平面図と見取図

ケージ、給水・排水、洗浄・消毒、空調などの設備の配置を示した平面図と、付近の見取図を添えます(規則第2条第2項第4号)。この設備の中には「動物の死体の一時保管場所」も含まれています。老犬ホームでは、実際に考えておかなければならない場所です。

③ 土地・建物を使う権原

事業所と飼養施設の土地・建物について、事業に使う権原があることを示します(規則第2条第4項第3号)。賃貸物件なら、老犬ホームとして使える契約内容かを確認してください。契約の内容や申請先の取扱いによっては、貸主の使用承諾書などが必要になります。物件を契約する前に、貸主と登録窓口の両方に確認しておくと安心です。

施設の基準:ケージ・人数・健康診断

第一種動物取扱業者には、動物の管理の方法等の基準を守る義務があります(法第21条)。老犬ホームに関係の深いものを挙げます(基準省令第2条)。

  • ケージと運動スペース:犬のケージの基本の大きさは、1頭あたり縦が体長の2倍以上、横が体長の1.5倍以上、高さが体高の2倍以上です。長期間お世話する場合は、「運動スペース一体型」か「分離型」の基準も満たす必要があります。一体型はケージの床面積を基本の6倍以上に、分離型は別に運動スペースを設けて原則1日3時間以上自由に運動できる状態にします(老犬に3時間の運動を強いるという意味ではありません)。傷病動物などには例外規定があるため、介護が必要な犬の設備は、その状態をふまえて登録窓口に確認してください
  • 床材:ケージの床に金網は使わない(肉球が傷まないように管理している場合を除く)
  • 職員の人数:犬の飼養・保管に従事する職員1人あたり、犬20頭まで(常勤以外の職員は勤務時間で換算)
  • 健康診断:1年以上続けてお世話する犬には、毎年1回以上、獣医師の健康診断を受けさせ、診断書を5年間保存
  • 日々の管理:1日1回以上の巡回と保守点検。清掃・消毒・点検の記録を台帳にして5年間保管

なお、都道府県・指定都市は、条例でこの基準に代わる基準を定めることができます(法第21条第4項)。事業所のある地域の基準も確認が必要です。

開業後に続く手続き

譲受飼養なら:帳簿と年1回の報告

譲受飼養業者は、販売業者などと同じく帳簿の備え付けと、年1回の報告が義務になっています(法第21条の5、施行令第2条)。

  • 帳簿は、犬1頭ごとに、譲り受けた日、譲り渡した方、死亡した日とその原因などを記載し、5年間保存(規則第10条の2)
  • 報告は、毎年4月1日から翌年3月31日までの分を、期間終了後60日以内に都道府県知事へ(規則第10条の3)。登録した年は、登録日からその年度の3月31日までの分です

犬の登録と狂犬病予防注射

老犬ホームでは、狂犬病予防法の手続きも関わってきます。

  • 譲受飼養で犬の持ち主がホームに変わったときは、新しい所有者であるホームが、30日以内に犬の所在地の市町村長へ届け出ます(狂犬病予防法第4条第5項)
  • 狂犬病の予防注射は毎年1回。この義務は所有者にありますが、所有者以外の者が管理する場合は、その管理する者が対象です(同法第5条第1項)。保管でお預かりしている犬も、ホーム側で段取りを考えておく必要があります
  • 犬が亡くなったときは、所有者が30日以内に市町村長へ届け出ます(同法第4条第4項)

マイクロチップの変更登録

マイクロチップの登録を受けた犬を登録証明書とともに譲り受けたときは、取得した日から30日以内に変更登録を受けます(動物愛護管理法第39条の6第1項)。犬の所在地の市町村が特例に参加していて、変更登録の情報が市町村に通知された場合は、狂犬病予防法上の所有者変更の届出をしたものとみなされます(同法第39条の7)。予防注射や注射済票の手続きは別です。具体的な取扱いは市町村に確認してください。

そのほか

  • 登録は5年ごとの更新(法第13条第1項)
  • 事業所ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲示(法第18条)
  • 動物取扱責任者は、都道府県が行う動物取扱責任者研修を受ける(法第22条第3項)

行政書士がお手伝いできること

第一種動物取扱業の登録申請・業種追加・更新・変更届出の書類作成と、窓口との事前相談は行政書士がお手伝いできます。「譲受飼養」「保管」のどちらで登録するか、サービスの形から一緒に整理することもできます。

一方、法人の設立登記は司法書士、税務申告・税務相談等は税理士、社会保険・雇用保険の手続きは社会保険労務士の業務です。

まとめ

  • 老犬ホームを開くには第一種動物取扱業の登録が必要(法第10条)
  • 飼い主さんが手放して費用を払うなら譲受飼養、持ち主のまま預かるなら保管。両方行うなら両方の登録
  • 業種は契約の中身で決まる。申込書・契約書をつくる段階で決めておく
  • 動物取扱責任者の実務経験は、保管・譲受飼養なら販売・保管・貸出し・訓練・展示・譲受飼養での経験が認められる(規則別表)
  • 平面図には動物の死体の一時保管場所も入る。賃貸なら老犬ホームとして使える契約かを先に確認
  • ケージの基本は体長の2倍×1.5倍・体高の2倍以上。長期なら運動スペース一体型か分離型の基準も。介護が必要な犬の設備は窓口に確認。職員1人あたり犬20頭まで。1年以上お世話する犬は毎年1回以上の健康診断
  • 譲受飼養は帳簿(1頭ごと・5年保存)と年1回の報告
  • 犬を譲り受けたら、狂犬病予防法の届出とマイクロチップの変更登録を原則としてそれぞれ30日以内に。特例が適用される場合は、所有者変更の届出が別途不要になります

老犬ホームは、飼い主さんにとって「最期まで任せられるか」がいちばん大切な場所です。手続きの土台がしっかりしていることは、その信頼の一部になります。開業を考えはじめた段階で、一度ご相談ください。

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出典

e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(第10条、第13条、第18条、第21条、第21条の5、第22条、第39条の6、第39条の7)
e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律施行令」(第1条、第2条)
e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則」(第2条、第9条、第10条の2、第10条の3、別表)
e-Gov法令検索「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」(第2条)
e-Gov法令検索「狂犬病予防法」(第4条、第5条)

※本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。動物取扱責任者の実務経験の対象となる関連業種は、施行規則の別表で定められています。個別の経験が要件に当たるか、必要な証明書類、条例による追加の基準については、所管の窓口にご確認ください。

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